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慢性気管支喘息などの呼吸不全の障害年金認定基準


呼吸不全の障害による障害年金認定基準(2010/11/1改正)は、厚生労働省によると、以下です。

(1) 呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいう。

認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全である。

慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではない。

(2) 呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見がある。

(3) 検査成績としては、動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等がある。

(4) 動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次のとおりである。
なお、動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとする。

A表 動脈血ガス分析値
区分検査項目単位軽度異常中等度異常高度異常
1動脈血O2分圧Torr70〜6160〜5655以下
2動脈血CO2分圧Torr46〜5051〜5960以上

(注) 病状判定に際しては、動脈血O2分圧値を重視する。

B表 予測肺活量1秒率
検査項目単位軽度異常中等度異常高度異常
予測肺活量1秒率40〜3130〜2120以下

(5) 呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりです。
一般状態区分表
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度障害の状態
1級前記(4)のA表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの
2級前記(4)のA表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
3級前記(4)のA表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する

(7) 慢性気管支哨息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定することとし、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

1 級最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となり、無症状の期聞がなく一般状態区分表のオに該当する場合であって、予測肺活量1秒率が高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの
2 級呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、一般状態区分表のエ又はウに該当する場合で、あって、プレドニゾロンに換算して1日10mg相当以上の連用、又は5mg相当以上の連用と吸入ステロイド高用量の連用を必要とするもの
3 級喘鳴や呼吸困難を週1回以上認める。非継続的なステロイド薬の使用を必要とする場合があり、一般状態区分表のウ又はイに該当する場合であって、吸入ステロイド中用量以上及び長期管理薬を追加薬として2剤以上の連用を必要とし、かっ、短時間作用性吸入β2刺激薬頓用を少なくとも週に1回以上必要とするもの
(注1) 上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであること。
また、全国的に見て、喘息の治療が必ずしも専門医(呼吸器内科等)が行っているとは限らず、また、必ずしも「喘息予防・管理ガイドライン2009 (JGL2009)」 に基づく治療を受けているとは限らないことに留意が必要。
(注2) 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理がある。このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要がある。
(注3) 「喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺線維症」については、呼吸不全の基準で認定する。

(8) 在宅酸素療法を施行中のものについては、原則として次により取り扱う。

ア 常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定する。
なお、臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1年6月以内の日に限る。)とする。

(9) 原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記(4)のA表及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定する。

(10) 慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3級と認定する。
なお、治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

(11) 慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、多臓器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものとは言えない。

(12) 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

酸素療法施行中の検査数値は、空気吸入時でみるのか、酸素吸入時でみるのか

呼吸不全の認定の仕方等が争点となった判決について、2月末に東京高裁で資料閲覧して、まとめてみたものです↓。
東京地裁判決平成28.1.19

酸素療法施行中の人の検査数値は、空気吸入時でみるのか、酸素吸入時でみるのかという、前から大きな問題の一つだと思っていた点について、参考となる国の主張がなされています。

酸素療法を原則3級としているのだから、酸素療法開始後の数値で判断するのだ、空気吸入時で判定すると在宅酸素適応者は全て2級となってしまい、酸素療法を3級としている認定基準と大きく矛盾するという国の主張があります。

これによると、国は、認定基準には書かれていませんが、酸素吸入時の検査結果で等級を認定すると宣言しているに等しいです。

でも逆に、では酸素療法適応者がすべて3級なら、どういうケースで2級(障害基礎年金)支給となるのだということを問いたいです。血液中の酸素濃度が正常となるよう酸素吸入量を調整しているのが酸素療法のはずです。
高度慢性呼吸不全の健康保険適用基準
動脈血酸素分圧55mmHg 以下の者及び動脈血酸素分圧60mgHg 以下で睡眠時又は運動負荷時に著しい低酸素血症を来す者であって、医師が在宅酸素療法を必要であると認めたもの
1mmHg=1Torrですから、この健保の適用基準からすると、1級(55Torr以下)の人はすべて酸素療法適応となり、56〜60Torrで重度の人も適応となります。56〜60Torrの人で、軽度の人だけが2級となり、あとの人すべては3級(障害基礎年金は非該当)となってしまうのです。病状の重症度と等級認定が逆転してしまうということです。

一方、手帳、難病、労災が全て室内空気吸入時で等級や重症度を認定しています。障害年金だけが酸素吸入時で認定しているのはまったくもって不合理です。

厚労省はすぐに酸素療法中の場合は2級とするよう認定基準を改正すべきです。


Web www.shogai-nenkin.com

安部敬太社会保険労務士事務所
社会保険労務士 安部敬太
安部敬太
東京都東村山市

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